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 糺の森には、いつもと同じように白いテントが立ち並び、本の山のなかを大勢の人々が歩いているのでした。私は本を見ながら、目の端でお姉さんの姿を探してみましたが、それらしき人は見つかりませんでした。少し落胆して本棚に集中しようとしたのですが、ふと一人の女の子の姿が目に留まりました。不思議と目を外すことができませんでした。  女の子は必死に本を捲っていました。その姿は、あの日の幼い私のことを思い出させるのでした。私は自然とその女の子の横に歩いていきました。女の子は本を読むのに集中しているようで、すぐ隣に私が立ったことにも気付いていないようでした。  そのとき、私は何故だか分かりませんが、その女の子に話しかければならない気がしました。今、声をかけたら驚くかもしれないなとも思いましたが、私は自分の気持ちを抑えられなくなってしまい、思い切って話しかけてみることにしたのでした。何と話しかけようかと考える前に、自然に口をついて出た言葉がありました。  ――本がお好きなんですか?
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