11/41
前へ
/41ページ
次へ
 10ページ  それを見た男たちは不快そうにやや言葉を荒げて言った。 「村長、最初からそうした方が良かったんじゃないのかね?」 「申し訳ない。できれば魔法は使いたくありません。五十年の運命に対して、心の美しさを見せたいです。美しい心に触れさせて咲いたなら、みんなが心から喜ぶでしょう。できるなら協力してほしいです。五十年分の喜びの為に」 男たちは見つめ合った。 「どうする?」 「ここまで来たんだ。美しい花見ようじゃないか」 「俺も見たい」 「分かった。村長さん協力するよ」 「ありがたい! 心から感謝するよ。ありがとう!」  男たちは支柱に使う木を幾日かかけて、山から切って動物たちに運ばせた。幾日もの重労働に男たちは疲れていた。彼らは桜を側に腰を下ろした。そして桜を見た。 「見ろ! 蕾だ! 蕾だ!」  心からの喜びの声だった。桜はほんの僅かに、幾つもの蕾を付け始めていた。 「本当だ。蕾だ! やった! これで花が見られる!」 「やった、蕾だ! これで重労働が報われる! 重労働に遣り甲斐が出た。頑張るぞ!」 「おぅ! 頑張るぞ!」  男たちは心から喜び合った。そこに村長が現れた。 「村長さん、蕾が出ましたよ。五十年分の喜びです」  村長は心から喜んだ。 「何と! ありがたい!」 「村長さん、五十年分ですよ。五十年分の喜びです!」 「ありがとう!心から嬉しい! みんなに伝えて来る」 村長は住民たちに伝えに行った。男たちは喜びの声で、 「もう少しだ。最後まで頑張るぞ!」 「おお!」  その光景を魔女王国の老魔女ゴバと手下たちは、不快な思いで見ていた。魔女たちは男たちの格闘や喜びを、映像で見ていた。老魔女ゴバが手下たちを前に、非常に不快な顔で言った。 「まずい! まずい! あの桜が咲いたら非常にまずい! 何が何でも咲かれたら非常にまずい! あの桜を根本から切り倒せ! できるならあの男たちに切り倒させよ」  1人の見習い魔女が、その使命を負って男たちに向かった。支柱用に切った木は沼の辺りまで動物たちに運ばせたが、そこから桜までは男たちが運ばなければならなかった。男たちは担いで運んだ。最後に運ぼうとする時だった。そこに1人の乙女が現れた。乙女は微笑んで、温かな声をかけた。 「今日は。随分なお仕事ですね。あなたたちそのお仕事、幾らで請け負ったの?」 「金は貰ってない」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加