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 12ページ  男たちは乙女を無視した。 「もういい。関わり合うな」    男たちは木を担いで桜に向かった。乙女は男たちに向かって、   「無視するの? いいわよ」  乙女は男たちの後を追った。男たちは桜の側に木を置いた。そして支柱を桜に立てかけた。支柱に使う縄は蔦。男たちの後を追った乙女は、桜の幹の側の斧を見た。彼女はそれを手に取るや、すぐに大きく振り上げた。 「あなたたちが切らないなら、私が切るわよ」  一番近くにいた男が、すぐに背後から斧を掴み押さえた。 「馬鹿か、お前は! お前は俺たちの心に刃物を向けたんだぞ! 俺たちのプライドに!」 「私は自分の任務を果たすだけよ」 「何だと! 冗談じゃない! 分からんか?」 「プライドより何より、任務よ。自分の任務を果たす、それが最高のプライドよ!」 「馬鹿か、お前!」  男は力尽くで斧を取り上げた。乙女は魔女に変身して男から離れた。 「よくも邪魔してくれたわね。この代償、高く付くわよ。優しく最高のお持て成ししたのに、馬鹿ね。つまらぬ意地は最悪を招くだけよ。身に染みて味わう事ね。高が桜一本、何が命がけよ。馬鹿げた意地は命取りになるのよ」  魔女は右手を大きく頭上に上げた。その手に鞭が握られていた。一同の頭上を雀たちがさえずっていた。それを見ていた花の妖精たちは、  春が来る  もうすぐ春が来る  春は希望を宿す心に  色とりどりの花を咲かせる  あっ虹が出た  冬の虹と春の虹は違う  春の虹はうっとり  うっとりする心は美しい!  私たちの事よ  そこに村長が現れた。彼は魔女が鞭を大きく振り回しているのを見てびっくり、 「花の妖精たち、あれが見えるかね? 何とかならんかね? 助けてほしい」 「まぁ何て事! 命の尊さの危機! 運命の炎よ、自らの思いを優しく表現するがいい。魔女にも命の尊さが宿っているの。過ぎたるは及ばざるがごとし。汝の思いに優しく、されど汝の思いに身を焦がせ」  緑色の運命の炎が現れた。魔女は鞭を大きく振りながら、 「私の善意を無視した、それは構わん。それだけの代償を受ければそれで済む事。だが私の任務を阻止した事は許さん! 断じて許さん! お前たちのプライドに負けてのこのこ帰れる私じゃないわ!」  魔女は一人の男に鞭を向けた。その先に運命の炎は巻き付いた。
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