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乙女は鼻高々。男たちは花の妖精たちの言葉にも、言い様のない怒りと失望を感じたが、それに反応する気力もなかった。花の妖精たちは続けた。
「魔女様、あなたが倒したあの桜は偽物。偽りの桜、真っ赤な嘘の偽りの桜です」
乙女と男たちの立場が全く逆になった。男たちの顔は輝き、乙女の顔は全ての苦労が水の泡になった、失意のどん底に落ちた表情だった。
「嘘! 嘘でしょう? まさか?」
「本当です。ご覧なさい」
倒れた桜が消え、元の桜が元のように戻った。それを見た乙女はがっくり地面にへたり込んでしまった。男たちは感無量的喜びで喜び合った。
「良かった! 本当に良かった! 元通りになった! 良かった!」
花の妖精たちは乙女に、
「私たちはあなたに美しい心を見ていただきたくてね、偽物、偽りの桜、真っ赤な嘘の桜を作りました。あなたは夢中で一心に桜を切りました」
乙女はへたり込んだまま、駄々をこねるみたいに両足で地面を蹴りながら、
「美しい心? どこにある? そんなもの!」
「あなたの心にです。一生懸命だったあなたの心に、心の美しさがあるのです」
乙女は俯いたまま言葉が出なかった。喜び合う男たちは桜に向かい、支柱を立てる作業を始めた。乙女はそれを腹立たしく見つめていた。必死に頑張った苦労が水の泡になった怒り、このままでは帰れない腹立たしさと恐怖、喜び合う男たちへの怒り、騙された怒り、これらが頭の頂点まで来た時、彼女は立ち上がった。魔女に姿を変えていた。花の妖精たちはそれを待っていたかのように言葉をかけた。
「魔女様、見えます? 美しい心が」
魔女は怒りを露に、
「心の美しさが見えるかだと? 見えるもの全てが腹立たしく見えるわ! 忌々しい!」
このまま帰れない魔女は、死を覚悟した最後の戦いを試みた。彼女は手に魔法の杖を持っていた。
「全てをひっくり返してやる!全てを見返してやる! この恨み、晴らさずにはいられん!」
沼の辺りから男たちを睨む魔女、魔法の杖を右手に頭上に上げた。この場面を想定していたかのように、緑色の運命の炎は、頭上から魔女をすっぽり巻いて胸で止まった。彼女は身動きできなくなった。
「何なのこれ? 腹立たしい! くそ!」
ありったけの抵抗を試みるも、体はぴくりとも動かなかった。
「くそ! くそ! 放せ! 放せ!」
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