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 17ページ  どんなに抵抗しても体はぴくりとも動かなかった。花の妖精たちの優しい声、 「魔女様、私たちはあなたに美しい心を見ていただきたくてね、このような運命を用意しました。見えます? 美しい心が」 「見えぬわ、そんなもの! 忌々しい!」  魔女はなお、ありったけの抵抗を試みるも、体はぴくりとも動かなかった。魔法の杖が彼女の手から落ちた。完全敗北を受容した。このまま帰れなかった。全てを失った絶望感、完全敗北、それは死を意味していた。全てを諦め、全てを受容した。乙女姿に変わっていた。花の妖精たちの声、 「運命の炎よ、汝の思いに温かな愛を注げ。汝の思いに身を焦がせ、心美しきままに。全ては永遠の為に、全ては蘇る為に、全ては心の美しさの為に。汝の思いを捧げよ、心美しきままに」  緑色の炎は赤紫に変わった。乙女は熱さを感じたが、どうでも良かった。いささかの抵抗もしなかった。彼女の心から全ての感情が消えた。このまま死にゆく、そう思える運命に、彼女はいささかも抵抗しなかった。やがて運命の炎は消えた。乙女は立ったままだった。最初に彼女の両手が動いた。その手は胸を押さえた。そして男たちを見つめたまま動かなかった。ずっと成り行きを見つめていた村長、乙女の姿は桜に支柱を立てる男たちと同じように美しく思えた。乙女の顔は安らぎと希望に満ちたような表情に変わっていた。乙女の年齢に相応しい魅力で輝いていた。花の妖精たちの声、 「全てを輝かせる情熱は精一杯生きた情熱から。魔女様、あなたは自分の思いに精一杯生きた。やった事の善悪は別にして。真の心の美しさ、それは蘇った時から始まるのです。永遠の情熱を秘めた心は、自らの心の美しさを見つめた時から、自らの情熱を捧げて輝くのです。命の尊さにめぐり会う運命、それは心の美しさにめぐり会う運命。良い行い、悪い行い、神様の愛はその全てを越えて、心を光へと導くのです。心の美しさに目覚めたなら、永遠の心の輝きを見るでしょう。全ては心の美しさから始まるのです」  乙女は両手を胸に男たちを見つめていた。その光景は善に満ちているように思えた。完全敗北、帰る場所はない。その思いが過去を見つめようとする自分を否定した。これから生きて行く道は未来以外ないと思えた。未来への道は光輝く道以外、自分が求める道とは思えなかった。
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