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その桜は五十年、花一つ咲かなかった。
魔法界、中心から外れた場所。
フラワーファンタジーランドは花々が一杯。花のジュウタンがここあそこに一杯。それは見事! そこで住む住民たちはいつも、花々を見て夢溢れる、そんな思いで暮らしていた。ただ一つだけ、住民たちを悩ませているものがあった。
ある日の事、羊を飼う一家の長女が狼に殺られた。すぐ下の妹メーナは、大きな衝撃を受けて心を閉ざしてしまった。来る日も来る日もメーナは心を閉ざしたまま。メーナをみんなが心配。村長はメーナに心を開いてほしい為に、こんな事を言った。
「メーナ、悲しむ事はいい事だ。涙一杯流す事もいい事だ。でもねメーナ、みんなの思いにいつまでも背を向け続けるのは良くないね。みんなが心配するのは素晴らしい事なんだよ。できる限りみんなの思いに心を向けるべきだよ」
メーナは心を開かない。村長は花の妖精たちに協力を求めた。メーナの姉は虹が大好きだった。それは未来への架け橋そのものだった。花の妖精たちは虹と同じ色で輝いた。幾日も続いた。メーナはそれを姉のように思った。花の妖精たちが移動すると、虹は動いているように見えた。メーナは心から感動して家から出た。
「素晴らしいわ! 素敵! 私、独りぼっちより素晴らしいのを見てる。素晴らしい! お姉ちゃんみたい」
「メーナ、あなたは素晴らしい自分を見たのよ」とメーナの母が喜んだ。
メーナの父も喜んだ。
「そうだよメーナ、お前は独りぼっちより素晴らしい自分を見たんだよ。心を開くってね、素晴らしい自分を見るのと同じなんだ。素晴らしい自分はなメーナ、みんなと一緒にいると楽しくて嬉しい事、一杯なんだよ」
メーナは心の扉を開いた事を喜んだ。
「お母さん、お父さん、ありがとう!」
メーナはみんなと喜んだ。それを見た村長は花の妖精たちに言った。
「心の扉を開く事は素晴らしい事だ。だけど言葉で心の扉を開くには、心の扉は重いのかもしれない」
「村長様、心の中には大切な宝物が一杯。だから簡単には開かないんです。心の扉は素晴らしいものや美しいものを見ると、自然に開くようにできています。心の扉に重みはありません」
「そうか。それなら美しいものや素晴らしい事、一杯考えなければいけないね」
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