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 2ページ  村長は花々のコンテストの開催を考えたのだが、その日から日照りが続いた。花々が萎れて枯れ始めた。誰もの心が乾いて荒れ、自分の事しか考えないようになって思い遣りを忘れた。そして不満を言い、些細な事で大喧嘩。村長は憂えて一計を考え、みんなを集めた。 「みんなで競争しよう、雨が降るまで。審査員は花の妖精たちだ」 「競争? 何を?」 「素晴らしい事をする競争だ。一番素晴らしい事をした者は、ほしいものを手に入れる。どうだ?」  不満は出なかった。みんなが賛成した。住民たちは花々や作物に水を運んでかけた。誰もが黙々と働いた。小さな親切が笑顔と共に見られた。メーナも一生懸命両親の手伝いをした。弟と妹の世話をしたり、遠くから水を運んで花々にかけた。そして疲れている者は誰でも、優しく温かく励ましの言葉をかけた。とにかく一生懸命。みんなはメーナの一生懸命を心から喜び誉めた。誰の口からも不満が消え、喧嘩をする事もなくなった。思い遣りが戻りかけていた。花々が元のように綺麗に咲き始めた。雨が降った。十分な雨にみんな大喜び。村長はみんなに言った。 「みんなが素晴らしい事をしたお陰で元のように花が咲いた。素晴らしい事だ。やればできるんだよ。心を合わせ合えばできるんだ。忘れないでほしい、心の美しさはどんな運命にも、花を咲かせるって事を。運命の力より心の力の方が強いってこと、忘れないでほしい。さて、一番素晴らしい事をしたのは誰だ?」  花の妖精たちが言った。 「メーナよ。メーナは一生懸命。何よりみんなの心を一つにしたわ。メーナ、おめでとう!」  不満は一言も出なかった。みんなが祝福の拍手。村長はメーナに、 「メーナ、おめでとう! 君が一番素晴らしい事をしたよ。さぁ、言ってご覧。一番ほしいものを」  メーナは信じられなかった。彼女は17歳。 「私が? 本当に?」 「本当だよ。君は一番素晴らしい事をしたよ。疲れている者は誰でも、優しく勇気付けて励ました。素晴らしい事だよ」 「私が独りぼっちで辛い時、みんな優しくしてくれたわ。それの恩返しをしただけよ」 「メーナ、それが素晴らしかったんだよ。真心込めて恩返しをした。それが素晴らしかったんだよ。さぁ、言ってご覧。一番ほしいものを」  メーナは両親が幸せだったのでこう言った。 「何も要らないわ。お父さん、お母さんが幸せだから、何も要らないわ」  
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