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 4ページ  村長は侵略者たちと対峙した。 「お前たちの一方的な都合で、我々の命の尊さが蹂躙される。あってはならぬ事、許されてはならぬ事」  勢いをさらに増して吹き上げる溶岩と炎。その炎は幾つもの輪になって、一同に向かって飛んだ。侵略者たちは武器で威嚇したまま、 「文明は多くの命の犠牲を土台にしている。文明は無限の資源を要求する。人類は文明という絶対的理想に絶大なる英知を注いでいる。わしらが文明に供与する限り、わしらは何をしても許される。それが文明に関与する者の特権だ」 「我々も人間だよ。お前たちは我々を見下げている。文明は恐ろしい武器だ。命の尊さを蹂躙する恐ろしい武器だ。命の尊さを蹂躙する、こんな恐ろしい事はない。それは心の醜さと同じだ。お前たちは文明を盾に、心の醜さに鍍金しているだけだ。命の尊さを蹂躙する心の醜さが、お前たち自身を滅ぼすであろう」 「黙れ! わしらは文明はどうでもいい。利益を得られればそれでいいんだ」 「文明は命の尊さに優しく有益であってこそ、進歩は認められるべきだ。文明は無限の資源を要求する。だが地球の資源は無限ではない。命の尊さを蹂躙する文明はいつか、地球をパンクさせるだろう」 「確かにお前の言う通りだろう。だがもう遅い。文明はもう誰にも止められん。そんな事はどうでもいい。わしらは利益を得られればそれでいいんだ。わしらはあんな噴火位で怯まんぞ、命かけているからな」  一同に向かった幾つもの輪になった炎は、一同の頭上で静止した。村長は侵略者たちに対峙したまま、 「命をかけている? それが命の尊さに向けられた情熱なら、これ程素晴らしい事はないだろう。だが命の尊さを無視して己の都合のいいように物事を解決するなら、己の心の醜さで己を滅ぼすだけだ」 「わしらにもしもの事があったら、お前らは皆殺しだ」 「心の醜さはどこまでも、命の尊さを無視するか? 悲しい事だ。己の都合しか考えない心は不幸だ」 「わしらが持っている武器はな、文明の最先端を行く。味わってみるか?」 「頭上の炎を見るがいい」  侵略者たちは頭上の炎を見た。炎は緑色に変わった。侵略者たちはその色に、一瞬心打たれた。その隙に炎は侵略者たちの胴体に巻き付いた。侵略者たちは一様に慌てふためいた。 「何だ、これは?」 「運命の炎だ。お前たちの体はぴくりとも動かんよ」 「忌々しい! くそっ!」
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