【2】動物霊の通り道になっています

17/29
前へ
/120ページ
次へ
「だ、だれ」 声が掠れる。 「いい質問ね。でも今はそれは関係ないの。あんた、死にたいんでしょ?」 唐突すぎる。 なんて唐突な質問返し。 でもそうだよね、屋上のフェンスを越えようとしてるのだ。それにしか見えなくて当たり前じゃないか。もし遊んでいるように見えたならそれこそ問題だ。 「死にたいならさ、まずは協力してからにしなさいよ。あんたにやってもらいたいことがあるわけよ」 そんなことを言われたってはいそうですかとできるわけがない。 「あんたにしかできないことがあるんだけどな」 自分は死のうとしていたのだ。そんな人に頼むことがあるとは到底思えない。 「ほらまた。僕が行ったことに対してちゃんと答えないと。無視してるわけ? 怒るよ」 やばい。何か話さなきゃ。また何かするかもしれない。 「あ、あのっ、自分は死のうとしてたんです。それをなんで止めたりしたんですか。ここまで来るのに結構な日にちがかかった。勇気だって必要だった」 生半可な気持ちで来たんじゃない。 「最後には死なせてあげるって。でも、死ぬのは今じゃない。今は僕の言うことを聞くとき。この仕事が終わったらスパッと痛まず苦しまずあなたが知らないうちに殺してあげる」 何を言っているんだろうこの人は。 ちょっとよく理解できないけど、死のうとして上がってたフェンスから一瞬にして屋上に連れ戻す変な力みたいのを持っているのだとしたら、超能力者かななんかか。そんな人が何のために見ず知らずの自分を引き止める?
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加