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話によると、猫の霊というものは真っ黒い影だということだ。
黒い影のようなものなんて、体が疲れているときや体調不良、寝不足のときなんかにはよく見ていた。だから、影の猫とそれを区別しろと言われたってできないように思う。
そもそも論で、影ならば掴みようがないってわけで、すかっすかのものをどうやって掴めというのだろう。
写真にでも撮ればいいのだろうか。すぐに電話したってそんなに早く来られる距離にいるとはわからないし。てか、どこにいるんだろうあの人は。
電話はこの家に置いてあった。そして電話番号も一つだけ入っていた。
とにかくだ、自分のやることは一つだ。
猫見つけたら電話する。それだけやったら死ねる。
人に感謝された後に死ねる。そういう約束をしたんだ。
何も余計なことは気にしないでやるべきことだけをやろう。
確かその影は玄関から唐突に入ってきて、玄関の向かいにあるこの窓から抜けていくと言っていた。
その近くに布団を敷いて、猫が通るのを待つ。
触るなんてことはできない。言ってみりゃ幽霊だ。幽霊を触るなんてことしたくない。怖すぎる。
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