【2】動物霊の通り道になっています

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夜中の二時を回ると、いつも通りに体の芯が震えるほど寒くなる。 暖房を入れて風向きを固定してもこれだ。 寒くなっているときは来ている証拠だと言っていた。今このときにここら辺を動物霊が通っているということか。 視ろ。 とはなんとぞんざいな言い方。 霊能者じゃないんだから視えるわけがないとは思うが、言われた通りに視ようとする自分はなんとも愚かだなと思う。 とはいっても、目を凝らしてみたけど、視えない。 目を細めてみたけど、視えない。 鼻の下を伸ばして更に目を細めてみたけど、ぜんぜん視えない。 ふうっと力を抜いた。肩の力を抜いた。 スと左の片隅に黒い影が通った。 そんな気がした。 そっちに視線を向けるけど何もいない。 緊張が走る。 視えちゃうの? もしかして視えちゃうの? 視たいけどそれはそれでとてつもなく怖い。 もう一度、恐る恐る見てみた。怖いもの見たさだ。 でもやはり視えない。 気のせいか。 そう思うと落ち着いた。体から力が抜けた。 暖房の風も感じられるようになった。 安心したそのとき、背筋を冷たい何かが上から下へと這った感覚に襲われた。 ゾッとした。何かがいる。後ろに何かがいる。何かとてつもなく巨大なものがいる。背中を覆うようにヌメっとしたものがいる。 急激に恐ろしさが増し、呼吸が荒くなる。電話じゃなく布団を掴んだ。 そのまま一気に頭から被り、目をきつく閉じる。 布団越しに覆い被さってくるのがわかる。 消えろ。消えろ。消えろ。消えてくれ! 心でお願いする。なんかよくわからないけど、どこかで聞き齧ったお経のようなものを唱える。 何分かはたまた何時間かはわからないが、布団の中で丸くなって目をぎゅっと閉じ、耳を両手で塞いでいた。 寒いはずなのに、今は汗だくだ。 耳から手をゆっくりと離す。遠くの法でスズメが鳴く小さな声が聞こえてきた。 朝だ。 あの得体の知れないなにかはいつの間にやら消えていた。 もう大丈夫だ。もう来ない。 そう思うと安心し、自分でも知らぬ間に眠りに落ちていた。
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