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「起きた?」
その声を聞いて、字のごとく飛び起きた。
辺りを見回す。
黒いものはいなくなっていた。
声の主は、オレンジジュースを飲みながらお菓子を食べつつあぐらをかいてテレビを見ている。
あの女の人だ。
クスクスと一人笑いをしたり、テレビにツッコミを入れたりして、そこにいる。
「あんたさあ、僕が電話してるのにぜんぜん出ないからさ、はっ倒してやろうと思って来てみりゃなんか伸びてるし。で、変な気が充満してたから、ああ、当たったなって思って。はい、当たり」
意味がわからないことを言っているが満面の笑みだ。
ということは、やはり昨日の夜のあれがこの人の求めているものだったのだろうか。
「自分が昨日の夜に見たものっていうのが、もしかしてあなたの探しているものなんですか」
「多分ね。でもまだそうとも言い切れない」
「黒い尻尾みたいなのがフワって通って、それでいつもと同じように部屋が冷たくなって背中が凍りついたみたいになって」
「で、失神しちゃったってわけよね」
「すみません」
「いいのいいの。謝ることじゃないわ。よくやったわよ。あんたはソレをちゃんと掴んだんだから。ほら見て」
指を指した方、壁を見ると、そこには黒い墨のようなもので所々に何かが描かれていた。
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