第1章【誕生】

11/16

155人が本棚に入れています
本棚に追加
/725ページ
「何、してんだよ俺は……このままじゃ、ずっとお面かぶったままのお面ライダーだぜ……いや、免許すらもってねぇし……自転車……も昨年盗まれて買ってない」  ようやく一歩目を踏み出したのが、それから二十分後だった。 「変身ごっこにしても、こんな海外の土産物でなにがカッコいいんだよ。誰にも会いたくないなぁ」  すると隣のおばさんがビニール袋を持って歩いていた。スーパーの帰りであろう。  良夫はサッと身を隠す。 「やばい……こんな姿見られた日には即、回覧板で回されるぜぃ。それも生ゴミの日のお知らせの下に……」  だが、急がないと、病院が終わってしまう。  様子を見ながら、うつむいてゆっくりとすれ違う。 「大丈夫。帽子かぶってるしいつもとは服装ちがうし。バレないバレない」  おばさんは良夫を見た。 「あらあら、隣の田中さんやないの。どないしたん?」  バレてるし……。
/725ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加