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時代は西暦202×年。季節は暖かくなりつつある3月下旬。
舞台はOSAKA平野区。
この日は晴れ、平凡な朝の風景から始まった。
JR線が、乗客をパンパンに詰め込み、音をたてて走る。
高架が見える下町の喫茶店で、新聞を読みながら、モーニングセットのパンを口にする男。
三面記事を目を細めながら眺めている。
「んふふ」と軽く笑う。どうやら4コママンガを見ていただけのようだ。
男の名前は田中良夫。165センチで、メガネをかけ、少しなよなよとしている。着ているものは、ブルーのトレーナーに作業ズボン。油で汚れた千円程度の白いスニーカー。寝ぐせのついた頭はやや伸びっぱなし。
40歳でまだ独身。普段は街のネジ工場で働いている。
趣味はアニメキャラの模型作りと競馬。これから先の人生が心配になりそうな趣味だ。
喫茶店の中で、客とマスターが話し込んでいる。
「最近、またひったくりが増えてるみたいやなぁ」と客が話す。
「何年たっても、これだけは減りまへんなぁ」とマスター。
「そやけど、厳しなるそうやで、窃盗罪は無期懲役とか?」
「ほんまかいな!? ほんなら殺人やったらなんの迷いもなく死刑やがな」
言いながら、マスターは空になったグラスに、お冷やをそそぐ。
「あ、おおきに。しかし、また、全国の刑務所は人いっぱいになってくるで。早よ悪いやつは死刑にせな」と客は笑う。
「そんだけ物騒やってことですなぁ。あんたも食い逃げとかしなはんなや。捕まりまっせ」
「アハハハ、冗談キツいわマスター、おっと、もう時間や……ほんならツケといて」
「へいへい、お勤め頑張って、いってらっしゃい……ハァ~……て、あいつ一見さんじゃねえか! まてーっ!」
マスターが店を出て追いかけた瞬間、他の二、三人の客も「今のうちや!」と出ていった。
グルだった。
良夫はただ、黙って見てるだけだった。
コーヒーを飲み干し、料金430円を皿の下に置いて店を出る。
モーニングセットは480円だが……。
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