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「新婚旅行の土産だよ。現地の人がお祭りの時に付けるお面なんだって。厄払いするんだってさ」
「ふ~ん」
良夫は興味が無いと言いたげな顔で、マジマジとお面をながめた。
「それとなぁ、身に着けた者には幸運が宿るんだと。また勇気と力がみなぎると……」
「ありがとう」と奪うようにして紙袋を受け取った。
「あ、今どこで食いついた? 反応早っ!」
良夫は欲しくて受け取った訳ではない。
これ以上、話を聞きたくなかった。
それも、新婚旅行の土産だ。
聞きたくなかった。
新婚旅行どころか、女にさえ縁のない自分には、そんな土産話なんぞ苦痛すら覚えた。
ただ、時間がたつにつれ、苦痛が頭痛に変わり、さらなる苦痛が良夫を襲いはじめた。
「早く終わりてぇ……」
時計を見れば、まだ2時。3時の休憩もまだまだだ。
午後6時。
ようやく仕事が終わり、良夫は一人、我がオアシス、コンビニにいた。
ビールと柿の種、弁当を買う。
レジで弁当を温めてもらっている間に勘定をすます。
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