第1章【誕生】

4/16
155人が本棚に入れています
本棚に追加
/725ページ
「新婚旅行の土産だよ。現地の人がお祭りの時に付けるお面なんだって。厄払いするんだってさ」 「ふ~ん」  良夫は興味が無いと言いたげな顔で、マジマジとお面をながめた。 「それとなぁ、身に着けた者には幸運が宿るんだと。また勇気と力がみなぎると……」 「ありがとう」と奪うようにして紙袋を受け取った。 「あ、今どこで食いついた? 反応早っ!」  良夫は欲しくて受け取った訳ではない。  これ以上、話を聞きたくなかった。  それも、新婚旅行の土産だ。  聞きたくなかった。  新婚旅行どころか、女にさえ縁のない自分には、そんな土産話なんぞ苦痛すら覚えた。  ただ、時間がたつにつれ、苦痛が頭痛に変わり、さらなる苦痛が良夫を襲いはじめた。 「早く終わりてぇ……」  時計を見れば、まだ2時。3時の休憩もまだまだだ。  午後6時。  ようやく仕事が終わり、良夫は一人、我がオアシス、コンビニにいた。  ビールと柿の種、弁当を買う。  レジで弁当を温めてもらっている間に勘定をすます。
/725ページ

最初のコメントを投稿しよう!