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アルバイト店員の女性の手が、お釣りを受け取るさいにかすかだが自分の手に触れる。
それだけで良夫は、固まってしまう。
自然と顔がほころぶ。ついついニヤニヤとしてしまう。
「今日はいい日だねぇ」
コンビニを出ると、入り口横に五人、ガラの悪い、高校生と思われる若者男子が座り込んでいた。
チラリと見たが、良夫はとくに気に止めず、彼らの前を通りすぎた。
「おい、おっさん」
突然、呼び止められた。
「え……」
20分後、良夫は数人の若者に囲まれ、薄暗い空き地で倒れていた。
「立てよおっさん」
若者の一人が、良夫の土手っ腹を蹴りつける。
「ぐふっ!!」
良夫は苦痛な表情を浮かべ、腹を押さえてうずくまる。
さっきより、若者の数が増えていた。
「俺が何をしたって言うんや……」
かすれた声で、涙を浮かべながら言う。
「気にいらねぇんだよ。すれ違いざまに人の顔見て笑いやがってよぉ」
「違う! 笑ってない」
「笑ったやないかい」
若者は良夫の顔を蹴り上げる。
良夫は口の中が切れたのか、血を吹き出した。
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