第1章【誕生】

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 良夫は、六畳一間のボロアパートに住んでいる。  部屋に戻った良夫は、顔を洗う。唇は腫れあざだらけだ。  悔しさと、恐怖と、怒りが混ざって鏡の前で泣いた。  踏み潰されてグチャグチャになった弁当を、無事な物だけを選んで食べる。  箸を置きビールを口にするが、しみるのか吐き出してしまう。  思い出すのは連中の顔ばかり。 「くそっ!!」  ビールを力一杯、壁に投げつけた。  そのあと、綺麗に拭いた。 「ついてないよなぁ」  棚の上の少女のキャラクターの模型が、微笑んでいる。  ビキニ姿でブーツを穿いてピストルを持っている。 「……笑うな!」  良夫はそっと両手でフィギュアを持ち上げた。 「こんなの真剣に作っても誰も認めちゃくれねぇよなぁ。こんな時、慰めにもなりゃしねぇ」  また怒りが込み上げてきたのか、力一杯、壁に当てた。 『パカーン』と音を立てて粉砕するフィギュア。  大きくため息をつき良夫は、ひとつひとつバラバラになった部品を拾い集めると、瞬間接着剤で補修しはじめた。 「お前にはなんの罪もねぇよなぁ。ごめんな」と謝った。
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