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良夫は、六畳一間のボロアパートに住んでいる。
部屋に戻った良夫は、顔を洗う。唇は腫れあざだらけだ。
悔しさと、恐怖と、怒りが混ざって鏡の前で泣いた。
踏み潰されてグチャグチャになった弁当を、無事な物だけを選んで食べる。
箸を置きビールを口にするが、しみるのか吐き出してしまう。
思い出すのは連中の顔ばかり。
「くそっ!!」
ビールを力一杯、壁に投げつけた。
そのあと、綺麗に拭いた。
「ついてないよなぁ」
棚の上の少女のキャラクターの模型が、微笑んでいる。
ビキニ姿でブーツを穿いてピストルを持っている。
「……笑うな!」
良夫はそっと両手でフィギュアを持ち上げた。
「こんなの真剣に作っても誰も認めちゃくれねぇよなぁ。こんな時、慰めにもなりゃしねぇ」
また怒りが込み上げてきたのか、力一杯、壁に当てた。
『パカーン』と音を立てて粉砕するフィギュア。
大きくため息をつき良夫は、ひとつひとつバラバラになった部品を拾い集めると、瞬間接着剤で補修しはじめた。
「お前にはなんの罪もねぇよなぁ。ごめんな」と謝った。
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