155人が本棚に入れています
本棚に追加
/725ページ
次の日、良夫は会社を休んだ。
体調不良を理由に……。
ただ外に出るのが怖かっただけだ。
また意味もなく、絡まれたらどうしようという不安が良夫を襲う。
これじゃあ、ダメだ。
わかってはいるが、もう一歩気持ちが前進しない。
壁にもたれかけ、うずくまったまま時がすぎる。
午後5時。
工場の定時の時間。
明日もこのままじゃ、仕事に行けないし生活もできない。
なぜ、あんなガキ連中に舐められなきゃならないんだ。
良夫は鏡で自分の顔を眺めた。
笑いたくなるような酷い顔だ。
大きくため息をついた後、ふと、何気なしに昨日の昼に、勝重から貰った紙袋に目を向けた。
中にあるお面を手に取り、勝重が言ってた事を思い出した。
『身に着けた者には幸運が宿るんだと。また勇気と力がみなぎる……』
「お面なぁ……そう言えば、子供の頃は正義の味方になりたかったんだ。夜店で買ってもらったヒーローのお面をつけて遊んだら、自分がヒーローになった気がして、勝てもしないのにガキ大将に向かっていったことがあったなぁ……。あれって、自己暗示にかかるようなもんだろうな」
最初のコメントを投稿しよう!