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彼女は完璧を求める。
いつから完璧を求めた始めたのかしら、と台所で料理をしている隆二の姿を見ながら、彼女は過去を遡ろうとした。
しかしそれは上手くはいかなかった。
父親の影響だとか、自身の持つ元々の性格のせいだとか色々と決めつけるようと思えばできたのかもしれないが、そんなことは無意味であり、始まりをきちんと理解したところで、無駄に思えた。そもそも彼女は始まりを覚えていない。記憶の彼方へ押し込めていることを彼女は知らない。
「お待たせ」
と隆二が料理を運んできた。焼き魚に味噌汁に、漬物。それに小鉢には肉じゃがが丁度良い量で盛られている。
「どれどれ」
と彼女は微笑み、小鉢をつつく。特別凝ったものでもなければ、まずくもない。完璧な家庭料理だ。落ち着く。
「うん。相変わらず完璧ね」
「もちろんさ」
と二人は、いただきます、と手を合わせ食事を始めた。
「そういえば私、今度中華が食べたいわ」
食事が終盤になったところで彼女がそう口にした。
「え、中華?」
隆二の表情は途端に険しくなる。
「そう。たまに食べたくなるのよね」
もちろん彼女には悪気はない。いつものことである。
「中華か……」
隆二の顔は真っ青だった。
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