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「できたぞー!!」
野太い声で秀樹が彼女を呼んだ。
「ありがと」と彼女は笑顔を見せ、わーおいしそう、と続ける。
「すごいわ。?完璧じゃない」
小籠包にエビチリ、それに彼女が好きなカニ炒飯だった。食欲をそそる匂いが彼女を包む。
「食べてから言ってくれよ。それに」
秀樹はニヤリと笑い、奥からスープを持ってくる。
「フカヒレじゃない!!」
彼女は秀樹が思った通りの表情を見せた。この表情を見るとき秀樹はいつも、この瞬間のために生まれたんだ、と強く思う。
「ホント、完璧」
「だからそれは食べてから決めてくれよ」
秀樹は笑顔で応え、一緒に、いただきます、と口を揃えて食事を始めた。
「それにしてもいつの間に模様替えしたんだ?」
秀樹はスープを美味しそうに飲む彼女に尋ねる。
「ええ、昨日したのよ、ちょっと飽きちゃったから」
「そうか、なかなか良いな」と誰がしたのかは秀樹は尋ねなかった。聞きたくも、聞く必要もないことだ。
そういえば、彼女の雰囲気もいつもと違うことに気付く。どうやら化粧を変えたらしい。
「あ、気付いた?」と彼女は秀樹の表情の変化を見逃さなかった。
「ああ。化粧、変えただろ」
「正解!」と、秀樹、良く気付いたねー、とにっこりと笑顔を見せる。
秀樹はもちろん、誰にその化粧を教わったんだ、とは訊かなかった。
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