二つ目の真実

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勿論、それを慶吾が許すはずがない。 直にその娘は交通事故でこの世を去ったわ。 彼女の葬式の日に駆けつけた私は、泣き崩れる慶吾が可哀相で抱きしめた。 でもその時見てしまったの・・ あの子が、埋められていく彼女の棺を見て笑うのを・・ 心が凍りつきそうな位恐ろしい笑顔だった。 そしてその時思い出した。 父が慶吾を『悪魔だ』と言った事を。 私は理由を付けて慶吾を私の部屋に住まわせた。 彼の行動を監視して、これ以上犠牲者を増やさない為に。 そして慶吾が傷付かない為に・・ それが姉として、母としての私の役目だと思った。 其からは人を雇って慶吾に送られてくるファンレターや、 メール、プレゼントに至るまで、総てチェックさせて私が管理したわ。 そして彼に心を寄せていると思える相手からの物は慶吾には見せないようにして燃やした。 暫く一緒に暮し出すと、彼は私に優しくて、あの恐ろしい慶吾が私の勘違いではと思える。 まるで恋人に接するように私に接する。 そして、間違いが起こった。 コンサートの打ち上げで酔って帰った私を、慶吾が女として見てしまった。 他の女性を遠避けた事で、慶吾の中の我儘な彼が女を欲して私を襲ったの。 いけないと思っても、私も慶吾を拒めない。 姉としても母としても、そして女としても私は慶吾を愛していたから。 でも、それを父に知られる事になった。 何も知らない慶吾が、私と結婚すると父に言ってしまったの。 驚いた父は慶吾に総てを話してしまった。 彼は怒って私に詰め寄った。 私が何も言えずにいると黙って私の部屋からホテルへ移ってしまった。 そして、指が動かない事を理由に、突然活動を休止すると言い出した。 私はそれを認めるしかなかった。 でももう約束されたコンサートはキャンセルなんてできない。 4カ国のコンサートが終わったらと約束して、慶吾の自由を認めた。 その頃、燃やしてと依頼したはずの手紙が燃やされずに私の手元に届いた。 慶吾に見られる前にとベランダで燃やしていると、その中の一枚が風にあおられて下に落ちたの。 慌てて下に降りて探したけれど、燃えカスだけが草に絡んで見えた。 私は宙に漂う間に燃えたのだろうと思いそれ以上探さなかった。
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