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「ほら、そうするとそのブラなら小さい位だろ?」
本当だ、ペタンコの胸が大きく綺麗に見えた。
「次に買うときには店の人に見て貰ってから買うといい」
「慶吾ってどうしてこんな事知ってるの?」
「ああ、姉さんが下着のデザイナーなんだ」
私は鏡の中の自分の胸に見とれる。
少しだけ大人の女になった気がした。
「おいシャツ着ろよ。
本当に風邪ひくぞ」
彼にそう言われて自分に戻った。
「お礼無いの?」
彼が私に言う。
「え?お礼?」
私の胸を触ったくせにと彼を見る。
「腹減ったな・・
なんか無いの?」
気付くと昼だった。
「お母さんが出前取れって言ってたけど・・
何がいい?」
「嫌だ、出前飽きた。
君が何か作れよ。
ああ、料理・・できない・・とか」
「できるけど材料が無いの。
インスタントラーメンなら有ると思うけど」
「いいよそれで、野菜くらい入れてくれるだろう?」
結局インスタントラーメンを作らされて二人で食べた。
「インスタントラーメンって、初めて食べたけど思ってたより旨いな」
彼がそう言って私を見た。
「君が作ったからかな?」
ドキンと胸が音を発てる。
そのひと言で私は慶吾に恋をした。
私に男が好きだとカミングアウトしたばかりの我儘な男。
初めて会った時から私の事を顎で使った男。
私の胸に素手で触れて、何の興味も示さない。
そんな男に初めての恋心を震わせてしまった。
それなのにその冬、卒業も待たずに彼は突然アメリカに留学してそれっきり。
今朝の電話までなんの連絡もなかった。
その慶吾が私に会いたいと言った。
20年ぶりに・・
翌日の午後、到着ロビーで彼を待った。
今朝は珍しく早くに目が覚めた。
慶吾の顔を思い出す。
胸がドキドキと音を発てる。
16時30分到着のエール、フランスの便・・
私は自分の着ている服を見直す。
ブランドものでは無いけれどそれなりにお洒落な物を選んだ心算だ。
こう見えてもブティックを2店舗経営するオーナーだ。
服を選ぶセンス位あると思ってる。
高校を卒業後アパレルメーカーに8年勤めた。
外回りが主な仕事でブティックに品物を卸したり、トレンドのリサーチをしたりしていた。
殆どが女性と言う職場は生存競争も激しかった。
同僚には男性もいるには居たが、半分位は女性に興味の無い人種だった。
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