過去にとらわれて…

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  少年の名前はアキトというらしい。どこかで聞いたことあったが、思い出す余裕もない。 するとその男はオレに気づいたのか、腰を下ろし、オレの顔をのぞき込んできた。 『あなたは…最近、ここらで悪さをしているという青年ですね。』 『え!?そうなのか!!』 『話では、緑系の色をした髪、赤い瞳、そして尖った耳…エルフだと聞いております。』 『……っ…』 違う。俺はそんな綺麗な者じゃない。オレは人間であって人間じゃない、エルフであってエルフじゃない、ハーフエルフという種族。人間とエルフの血が混じった異端児だ。 さて、オレはここで捕まって殺されるなんて面白くない。せめて誰もいないところで静かに朽ち果てたい。逃げなければ。でも、身体は動かない。 『悪いやつかよ…って。それ、血か?』 オレの座ってる地面には乾ききって匂いもしなくなった、赤。薄暗くて見えなかったのだろう。 そうだ、盗みをした時にしくって、足に深手を負ってしまった。そのせいで数日動けず、今に至る。 『アキト様、行きますよ』 『…』 『なんだよ、けいさつとやらに渡さないのか?』 男は身を翻すと、呆れたように言葉をこぼす。 『その様子だと、動けずここで朽ち果てるでしょう。悪人にお似合いです。』 『な…!』 冷たくこぼされた言葉。そうだ。そうしてくれ。間違っていないんだ。傷も治療しておらず、盛大に膿んで、見るに耐えないものになってきている。もう歩くこともできないだろう。 やっと静かに死ねるのか、と思うと、うっすらと腐れ縁の顔を思い出す。なんでこんな時に…。長ら会ってはないからか…。そう思っていると、再び俺の腕に暖かい物が触れる。 『アキト様?何を』 『さすがマフィア、げどうだな。それぐらいじゃないといけないよな。でも俺はほっておけない。』 『…!』 マフィア。 この島についたすぐに聞いた話だ。 この島には大きな組織がある。名を Drago。この島は彼らから成り立ってると言ってもいいらしい。 こいつは、マフィアなのか…。そうか、この前聞いた、時期ボスの話…。「アキト」 こいつのことだったのか。 少年はニヤリと笑い、オレを見た。 そしてこう、一言だけ呟いた。 『俺は、こいつを引き取る』  
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