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「過去を忘れたい訳じゃない。ただ、俺は今、生きている。だからお前とその時間を過ごしたい。代わりだとか劣るとかそんな事ではなく、ただ一緒に居たい」
「……わたし…」
「すまなかった、フィーナ」
キースが椅子から立ち上がり、フィーナの傍に寄る。
涙の軌跡を、キースの手が撫でた。
フィーナは愛の言葉を、音も無く口の形だけで告げた後にキースの胸に顔を埋めた。
彼の胸元を強く掴む手は小刻みに震える。
キースはフィーナを抱き締める。
暫くして涙は止まったが、フィーナもキースも離れる事は無かった。
キースの胸元の生地を掴んでいた手は彼の首へと回され、キースは躊躇う事無くフィーナの腰に手を回す。
お互いの温度を知り、その差を無くすために唇を重ねる。
キースの手がフィーナの素肌に触れた。
それでも私は何度でも、この愚かしい嫉妬で苦しむのだろう。
キースを愛する限り。
苦しいと分かっていて彼から離れられないのだ。
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