第1章

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なぜなら…… 「お前、それで仮に付き合ったとして、知りつくした途端『ありがとうよくわかったわ。じゃあさようなら』とか言って別れる気だろ?」 「そうよ。悪い?」 いや悪ぃよ。 最低か! 「だって探求するものはまだ他に沢山あるじゃない。人生は一度きりよ? 時間には限りがある。だからこそ今、私は悔いなく生きるために探求するのよ!」 文句ある? とでも言いたげな顔に俺はやれやれとため息をつく。 紫音はいつだって貪欲だ。 故に真っ直ぐで前しか見ない訳だが、それがこうして日ごとにたちの悪い探求心になっている。 本人に悪気はないのだ。 純粋で、生真面目で、いつだって彼女は本気だ。 だからこそそれを周りに知られれば確実に人は離れていくだろう。 人は他と違うものを気嫌いする生きものだからな。 まあ、でも 「とりあえずその告白は断れ、代わりにもっと面白いことを教えてやる」 だからこそ、俺がお前を守ってるんだけどな。 「ゆーじがぁ? 」 「おいコラ、その『できるのぉ?』みたいな顔やめろ腹立つ」 「だってねぇ、ゆーじだしぃ~?」 「頭の悪そうなギャル口調もやめろアホ」 「えー? アホー? 私より成績も素行も運動神経すらも良くないのにぃ? そういうの勝ってから言ってもらえますぅ?」 「おまっ、ぜってー負かす!」 「あっはははははは!」 まあせいぜい頑張って~と余裕そうな笑い声を響かせて紫音は軽やかにステップを踏む。 まるで跳ねるようなその動きだけで運動神経の良さがより如実に見えて、俺はすこぶる不愉快になった。世の中不公平にも程がある。 けどだからと言って、負けっぱなしになる気はない。 いつもいつも言い負けてるからな、たまには俺も反撃だ! 「つーか話戻すけどよ」 「ああ、面白いこと? なぁに?」 「お前、俺と付き合え」 「んん?」
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