ストーカー探偵

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「常月さん、さっき上げて貰った資料なんだけど、午後からもう一度チェックして貰えるかな?」 「あ、すみません。ミスがありましたか?」 声をかけて来たのは岸田チームのサブリーダー、長内さんだ。 大胆に事を進めるリーダーの岸田さんに対し、岸田さんが見過ごしてしまう部分を細心にフォローする気配りの人。 この2人を光と影なんて例える人もいるけど、なるほどこの2人をコンビにした部長の采配は見事だと思う。 お互いの至らない部分を補い合い、今回のイベントの準備も順調に進んでいる。 背が低い事にコンプレックスを感じているみたいだけど、恋愛対象としてでも無ければ気にする人なんていないのに。 「ミスってわけではないんだけどね。この部分のレイアウトを見直して欲しいんだ。このキャッチをもう少し目立つようにして…」 そして説明を終えると 「お昼休みに悪かったね。常月さんのデスクに置いておくから、今日中で良いからね」 資料を手に、すぐ近くにある『第3オフィス』に入って行った。 今回、岸田チームに割り当てられた企画専用の部屋だ。 お昼休みに悪かったと言いながら、自分はお昼休み返上で提出された資料のチェックをしてくれている。 地味で面倒な仕事のほとんどは長内さんがこなしているのだ。 「はっ。最初から的確な指示を出していればミスなんて起こさねーっつーんだよなぁ」 これ見よがしに言う者がある。 「俺だったらもっと上手くチームを使えるだけどなぁ」 名采配の部長にも間違いはある。 それはこの男、木本さんをチームに入れた事だ。 当初、この企画のリーダーに立候補したが、同じく立候補した岸田さんがリーダーに選ばれ、サブリーダーにも指名されず、そのまま平のメンバーとしてチームに入った。 自己評価の高い木本さんは、自分がリーダーに選ばれなかった事、更に自分より能力が低いと信じている岸田さんの下にされた事が我慢出来ず、常にリーダー2人のやる事に不服と批判を漏らしている。 「ホント、木内さんの言う通りですよね」 その隣にいて同意を示しているのが、同じく平メンバーの里奈だ。 なんと木内さんと付き合っているらしい。 こんな自慢と批判ばかりの男のどこが良いのだろう…。 まあストーカーの彼氏を持っている私がなに言ってんだって話だけど。 他にも数人のメンバーがいるけど、この後の事件に巻き込まれるのは、私を含めたこの5人なのだ。
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