ストーカー探偵

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大きなトラブルもないままイベント準備は順調に進み、次の日にイベントを控えた金曜日、予定通りに仕事が終了した。 「前祝いの打ち上げだ!」岸田の号令が飛ぶ。 期限直前の追い込みで疲れ果てているはずのメンバーが歓声を上げた。 「明日はイベント本番だし、会社内だ。酒はダメだぞ」との長内の忠告はメンバーのブーイングで却下される。 「1人ビール1缶だぞ」と条件を出すが、それを守るのは個人の裁量に任されるだろう。 ケータリングの試食という名目でおつまみまで用意されたのは、仕事では細かい事まで気が回らないはずの岸田の発注だ。 「まったく…」と小言を言う長内も案外嬉しそう。 酒席の匂いを嗅ぎつけて、チームとは関係のない社員たちも仕事を終えた身体の疲れを癒す為、何かと口実をつけて集まってくる。 打ち上げ会場の会議室は会社に残っていた社員たちでごった返した。 宴もたけなわの頃、自分がいかに今回の仕事に多大な貢献をしたかについて木内が高らかに語っている中 「俺は守衛さんに挨拶してくるから。岸田はそろそろ上がって、明日になって慌てないようデータをカードに落として置くんだぞ」 と長内がドアを開けながら声をかける。 流石気配りの長内さん、終業後の社内での宴会で、守衛さんの迷惑になっているだろうと思って、話を通しに行ってくれるんだな。 纏はそう思った。 「分ってる分ってる。子供じゃあないんだ」 岸田は早く行けと手をひらひらさせて飲み続けるが、持っていた缶が空になると 「俺もそろそろ行くわ。皆はまだ楽しんでくれよ」 と会議室を後にした。 それからほんの数分後、バタバタと廊下を走る音が聞こえ、ドアが開いた。 「チームの皆、ちょっと来てくれ」 長内がスマホを手に青ざめた顔で室内のメンバーに呼びかける。 何があったのかと顔を見合わせながらチームメンバーが廊下に出て長内に続くと、他の社員も興味本位で後に続く。
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