ストーカー探偵

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ビールの缶だった。 「パソコンに掛けられた液体はビール。これに入っていたものだろう。缶の口には口紅が付いている。それに…」 岸田の胸の辺りを指差す。 岸田のワイシャツにも同じ口紅の跡が付いていた。 「ビールがほとんど絨毯に染み込んでいない事からも、犯人は直前までこの部屋にいた可能性が高い。そしてこの口紅の跡。やはり犯人は岸田にぶつかって消えた女性か」 長内の推理は皆を納得させるのに十分だった。 更に続ける。 「木内さん、アンタ確か、清水里奈と付き合っているよな」 「ああ!?」 「ええ!?」 木内、里奈の両名が驚きの声を上げる。 知らぬは本人ばかりなり、2人が付き合っている事は公然の秘密だった。 「木内さん、アンタは大声で自慢話ばかりしていた。それって、本当はアリバイ作りの為だったんじゃあないのか?」 「どう言う意味だよ?」 「データが故意に壊されたら、一番先に疑われるのは岸田に妬み丸出しのアンタだ。清水さんとの関係を知られていないと思っていたアンタは…」 「妬んでねーッ!!」 木内が怒鳴る。 「なんで俺が妬まなくちゃならねーんだよ!俺がいつ妬んだよ!妬んでるのは岸田の方だろ!お前も俺を妬んでるんだろ!俺がお前らより仕事が出来るからって俺を蔑ろにしやがって!なんでこの中で一番仕事が出来る俺がお前らの下なんだ!」 「それを逆恨みしてやったのか」 「だからやってねー!岸田もそう言ってんだろ!」 「だから、清水さんにやらせたんだろ!会議室でアリバイを作っている間、そっと抜け出させて。だが仕事が杜撰なアンタの事だ、その計画も杜撰で清水さんが見つかってしまった」 「私じゃない!」 今度は里奈が叫ぶ。 「私やってない。私…わたし…」 見るからに動揺して言葉が出て来ない。 「あの…」 里奈の姿にたまりかねた纏がそっと手を上げる。 「あの、私、ずっと見ていたわけではないですけど…里奈はずっと木内さんの隣りに居たと思います」 他のメンバーからも、そう言えば、という空気が広がり、里奈は涙ぐんだ目で纏に感謝の気持ちを伝える。 推理はそこで膠着した。
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