23 異界の人間

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 餓鬼は普通の人間には見えないので、祭壇の上の男は、餓鬼がそばにやってきてもぜんぜん気がついていないようだった。  それに対して、立っている男は、明らかに餓鬼の存在に気がついていた。  彼は、祭壇に近づいていく餓鬼を恐ろしく冷静な目つきで見つめていたが。よくよく見ると、そのまわりにはうっすらと、九鬼が出したのと同じ光の幕のようなものが見えていた。 (――こいつ、サレストか?)  餓鬼が見えているということは、オレたちと同じ、餓鬼や悪鬼と戦うものだということになるが、その中でも、こんなことができるのはたぶんサレストしかいない。  そのサレストは、餓鬼が祭壇の男に手を伸ばそうとしても何もしようとせず。ただ黙ってそれを見ているだけだった。
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