23 異界の人間

6/18
前へ
/38ページ
次へ
 はじめ、彼が何となく九鬼に似ているのは同じサレストだからだと思ったが、同じなのは立場だけじゃない。  その目……人を人とも思わない冷酷なまなざしは、オレを見る九鬼の目つきにそっくりだった。 「おい、何してるんだよ! 早く助けないと……」  オレは叫んだつもりだったが、それは声にならなかった。  餓鬼は、祭壇の上の男の頭を両手でつかむと、ものすごい力で引っ張りだした。  男が悲鳴を上げると、サレストはようやく男に近づき、刃物でヒモを切ったが、恐ろしいことに、それは男を餓鬼から助けようとしたんじゃなく、餓鬼が男を引っ張っていきやすくするために手伝ったように見えた。  餓鬼は、悲鳴を上げ続ける男を、そのまま異界の扉の近くまでずるずると引きずっていき。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加