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人知れず少女は涙する、太陽は黒く重たい雲に覆われ光の届かない暗い空、少女のへたりこむ周りはそこに人が住んでいるのか?と疑うほどの廃墟が広がっていた
「だからって、こんな………」
「言ったはずだ。すべてはまるで鏡写しの様に隣り合わせだと」
光と闇。
太陽と月。
空と大地。
神と悪魔。
幸福と不幸………
はじまりは。憧れからだった、幼い頃に見た魔法使いが登場する一冊の絵本。
まるで奇跡の様な力で人々を幸せにする魔法使いになりたいと願った。
「よう。また会ったな?………お嬢ちゃん」
「えぇ、また会いましたね。奏さん」
とある街の人々が忙しく往来(おうらい)する道の真ん中。そこだけ時が止まったかの様に向かいあう青年と少女。
青年の名前は奏(かなえ)。Tシャツにジーパン左手首に青色のブレスレット。どうしたらそこまで怪我を負うのかというくらい全身いたるところに包帯を巻き、松葉杖をつく、くせのない黒髪に濁った蒼い瞳の青年。
少女は、一希。香月一希(こうづきかずき)。年相応にその身にセーラー服を纏い長い茶髪を途中まで二つの三編みにして流し、ぱちりとした黒い瞳の少女。
どちらも最近、一度だけ縁(えん)が合い知り合った関係。
「この前より、怪我が増えていますね」
「目敏いな~まぁ、いつものことだから気にしない気にしない俺ってば昔からの体質ぽいからな」
「あぁ、そうでした!お大事に」
「ありがとな、お嬢ちゃん。それで、その後はどうだ?」
だというのに、まるで親友に話すかのような口振りで会話が成立する。しかし、二人の見た目により兄弟にみえるだろう
「それが中々………いまいち使いどころがわからなくて」
「はぁー?お嬢ちゃんよーこの前散々説明したろうが」
「で、でも! 」
「わかった、わかった!特別出血大サービス!実戦で教えてやるよ」
大袈裟に奏は、肩をすくめ一希は、その目を輝かせ跳び跳ねた。それにより、人々の視線が集まるざわざわとざわざわと
「ちっ、おいお嬢ちゃん。こっちにこい」
「はい!」
それを、煩わしそうに舌打ちをした奏は一希の右腕を掴み人気のない裏路地へと誘導した。
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