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腰まで伸びたみごとな金色の髪に、強い意志が宿る紫色の瞳。一希と違いブレザーの制服を着こなす少女.………
「あんたの名前は?」
「!!あ、私は、香月一希です。よろしくお願いします」
「透ちゃ~ん、高圧的すぎだぜ?お嬢ちゃんがいつも以上に畏縮(いしゅく)しちまってら」
「うっさいわね!私は、これが普通なの!」
見た目の通り気の強い透に畏縮する一希、それをニヤケながら透に注意する奏。1人増えただけで寂しい裏路地が賑やかになる
「知ってんよ………っと透ちゃんのせいで話がそれた。お嬢ちゃん、こいつが今日からお前の先輩だ、色々学べ。1人でやらせて毎回吐かれても困るからな」
「はぁ?なんで吐きそうになるのよ??というか、話をそらしたのは奏よ」
「分別出来てねーんだよ。人と『アリス』を………そうだったけか?」
「そうよ!.………じゃあ、明日学校が終わったらここに来て。勿論、寄り道せずによ!」
「はい!」
優しいのやら、厳しいのやらわからない奏は、一希に改めて透を紹介し。透は、白い何かが書かれた紙を渡すと、踵(きびす)をかえしこの場をあとにした。
残された二人は、特に会話もなく表通りに出、お互い反対方向に足を踏み出した。
「さぁて、帰るか」
既に、空は暗くなりあんなに歩いていた人の数もまばらになっていた。
「みぎわ、公園?」
無事家路についた一希は、自室で透から渡された紙に書かれた文字をなぞる。
みぎわ公園は、一希の学校ましてや家から離れた場所にある公園の名前だ。確か.………
「十月さんの着ていた学校の近く、だったはず」
「一希ちゃん~ごはんよ?」
「今日は食べて来たからいらない」
正確には、食べられるはずがない。吐き気は落ちついたものの、今日はもうごはんが喉を通る気がしない
「あらそうなの?じゃあ、お風呂に入って寝ちゃいなさいね?」
「はーい」
あっさりと、信じたお母さんはお風呂に入るように促すと、待たせていたお父さんとごはんを食べ始めた様だ。一希は、紙を鞄にしまい制服を脱ぎパジャマに着替えお風呂に入り、部屋に戻りベットに寝転びながら一冊の本を開いた。
「一歩、私も近づいたのかな?」
その呟きに答えるものはいない。
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