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WinningRoadが聴こえていたところまでは覚えていた。
心労や、他にもいろいろあって疲れていたんだろうか。
気がついたら、寝てた。
「アンタって、充電切れたみたいにパタって寝落ちするよね~」
グミが私を見て笑いながら、運転席から出て行く。
「……ん? ……あれ、着いたの?」
「ううん、まだ。今からガソリン入れるとこ」
グミの言葉に、寝ぼけ眼で周りを見渡してみると、なるほど、確かにここはガソリンスタンドだった。
グミが自分で給油口にホース突っ込んでいるので、セルフスタンドらしい。
その向こうに、無人の休憩室と、そこにある自動販売機が見えた。
「グミ、なんか飲む?」
「あ、じゃあコーンスープあったら買ってきて」
「了解」
小銭を握り締め、車を降りる。
う~、寒。
真夜中だからだろうか、蕎麦屋を出た時よりも、もっと寒くなっている気がする。
小走りに人気のない休憩室に滑り込み、自販機を眺める。
「コーンスープ……お、あったあった」
その隣にお汁粉もあったので、私はそれにする。
二つのぬくい缶を握り締めながら、ふと、近くの壁にかかっていた時計が目に入った。
時刻は夜の四時を回っていた。
「……おいおい」
私のアパート前を出発したのが夜の十時半ぐらいだったのに、あれから六時間も経っていただと?
私は足早にミニへと戻った。
「お~、スープ。さんきゅー、ミク」
グミがかじかんだ手をあっためるように缶を両手で包み込んで、それからブンブンと上下に振り回すと、プルを引いて缶を傾けた。
「あ~、うまい。……缶のコーンスープってさぁ、お汁粉もそうだけど、粒がよく飲み口に引っかかって残るよね」
「うん、残る。鬱陶しいよね、アレ。もっと飲み口広けりゃいいのに」
「みんなそう思ってるよね。だからいつかそうなると思ってたのよ。んでさ、こないだコンビニでさ、飲み口の広いキャップ式の缶のやつを見つけたのよ」
「え、マジで? 本当にあったんだ」
「そうそう。それで早速試してみたわけよ」
「どうだった? 残った?」
「ぜんぜん残んないのよ! 最後まで一気に全部口の中に流れ込んでくるのよ」
「おぉ、すごいじゃん!」
「ところがねぇ、飲んだあとに気づいんたんだけど……あれはやっぱり流行らないと思うわ」
「え、なんで?」
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