いつか君に捧げた歌 今じゃ哀しいだけの愛の歌

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走り出したミニのそばを、標識がすれ違っていく。 グミがそれを指さした。 「あぁ、あったあった。ほら“東尋坊まであと5キロ”」 「停めろォォォっ!!!」 私の叫び声に、グミは急ブレーキ。 ミニは路肩に突っ込む寸前で、なんとか止まった。 「あっぶないなぁ、ミク。なんなのよ、急に?」 「そりゃこっちのセリフだ。東尋坊ってあんた、どんな場所かわかってんの?」 「え~っと、なんか海にでっかい岩とかが突き出してゴロゴロしてる場所だっけ。よくテレビの観光番組とかで見るから、一度行ってみたいと思って」 「ついでにそこが自殺の名所とか言われてるのって、知ってる?」 「え、マジで?」 無知ほど怖いものはない。 富士の樹海と並ぶそんな曰くつきの場所に、失恋女が真夜中にギター抱えて歌っているって、どんな怪談だ。 「目的地変更! どっか他に適当な場所はないの?」 「う~ん」 グミが車内灯をつけて、ダッシュボードから観光雑誌を引っ張り出してめくりだした。 いまどきガラケーでだって、スマホ並みの検索機能はあるだろうに、乗ってるこの車といい、どこまでアナログ人間なんだろうか、この娘は。 「お、いいとこみっけ♪」 「どこどこ?」 「石川県羽咋市千里浜なぎさドライブウェイ!」 「どこそこ?」 「着いてからのお楽しみ」 グミは楽しそうに笑うと、ミニを発進させた。
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