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【クローン猶子】
くろーんゆうし。星大名家が皇国歴1520年代より始めた、当主及び次期当主のクローン人間を作り出す風習。当主及び次期当主が早逝し、後継者不在となって血統が断絶するのを回避するために、第二位以下の家督継承権が与えられる場合が多い。
クローン猶子の風習が現れた最大の原因は、皇国歴1490年代より出現し始めた、死亡率の高い新種の難病であるSCVID(劇変病原体性免疫不全)にある。
この新病は高いストレスと不規則な生活習慣のもと、宇宙で活動する期間の長い人間に多く罹患者を出す、いまだ治療法が存在しない難病であった。
それが星大名の各一族にも及び始めると、先祖返りした新封建主義を信奉する彼等は、死亡した者の地位を後継するものの選出で、混乱をきたすようになる。
特に象徴的であったのが有力星大名のイマーガラ家で、SCVIDに感染した当主とその嫡男が揃って急死した事によって、後継者を巡り激しい争いが起こり、内戦状態にまで至った(ハンナ・グラン戦役)。これを皮切りとして星大名の間で、クローン猶子を非常時の継承者として用意するのが、一般的になっていったのである。
クローン猶子は当主のクローン人間であっても、その成育環境の違いからオリジナルの人物と性格が異なって来る場合が多く、また当然感情と主義主張を有している。そのため代役的な後継者に甘んじる事をよしとせずに、自らが正当後継者となる事を目論んだり、人望によって第一継承者以上に家臣の支持を集めて派閥を形成し、家中が対立したりと、新たな火種を生み出しているのも事実であった。
だがそれでもクローン猶子の製作が続いているのは、血統が絶えるのを恐れる星大名達の、封建的性格が端的に示されていると言える。
【この項おわり】
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