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【DFドライヴ】
でぃーえふどらいぶ:ディメンションフォールドライヴの略称。重力子を使用した超空間転移航法を指す。ヤヴァルト銀河皇国や、かつてこれと敵対していたモルンゴール帝国をはじめとする、シグシーマ銀河系に存在する恒星間航行技術を持つ文明が共通して有する技術。
対消滅反応炉で得た重力子を重力子コンバーターで位相過負荷状態にし、放射デバイスによって宇宙船の前方(1km程度)に円盤状に放射する事で、次元的に落ちる穴―――虚空界面、いわゆるワームホールを人工的に作り出して、その中の通過によって恒星間などの超長距離の移動を瞬時に行う事が出来る。
原理としては超空間ゲートと同じであるが、転移先に着出用ゲートがないため、移動距離は機関の性能差が多少はあるものの、直線移動で一回につき概ね130光年前後となっている。
超空間転移後は機関の点検整備と、重力子チャージの時間が必要となり、これが平均8時間程度であるから、このサイクルを繰り返し1日24時間として、現在では1日に約400光年の移動が可能である。
ただし、超空間転移は周囲の通常空間の重力バランスを大きく歪めるため、惑星の公転軌道を狂わせる可能性もあるほどで、DFドライヴで移動できるのは、互いの恒星系の最外縁部以遠に限定されている。
またヤヴァルト銀河皇国が、シグシーマ銀河系全域に植民を始めた約300年前は、重力子抽出の効率が今と比べものにならないほど低く、特に螺旋パルス方式で重力子を大量に発生させる特殊鉱物『アクアダイト』の発見と、その利用技術の開発に成功するまでの一回の転移距離は、5光年程度でしかなく。直径およそ10万光年のシグシーマ銀河系の遠くの宙域まで植民するには、目的の星系へ到達するのに百年以上かかったのであった。
そのため、古い世代の植民船が目的の星系に到着した時には、その星系は後発した、より転移距離の長い植民船に追い抜かれて、すでに開発が始まっていたという笑えない話もあったほどである。
なお現在、さらに転移距離を伸ばし、星系内への進入も可能な新方式のトランスリープ航法が研究中だが、技術的にまだ開発は不可能とされている。
【この項おわり】
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