【劇変病原体性免疫不全】

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【劇変病原体性免疫不全】

   げきへんびょうげんたいせいめんえきふぜん。ヤヴァルト銀河皇国において現在、最も脅威を与えている病気。SCVID(Sudden Change Virus Immune Deficiency)とも。  皇国歴1490年代より出現し始めた、罹患率は低いが死亡率が92パーセントと相当高い新種の病気。いまだに治療法が確立されていない。  そのウィルスは劇変病原体の名が示す通り、瞬時に自らDNAを組み換え、全く別のウィルスに変化する事である。それに伴って症状も変化し、治療法も変える必要があるため、後手に回って患者が死亡してしまうケースがほとんどとなっている。  しかもそのDNA変化は、単なる風邪ウイルスに始まり、果ては銀河皇国が未だ遭遇した事のない未知のウイルスにまで及び、早期発見を困難なものにしているのである。そのため、一部では正体を明かさない病原体―――シャドウ病原体と呼ばれる。  シャドウ病原体がどこから来たかは不明だが、初期に風邪や脳炎といった一般的な病気に成りすますケースが多いため、早くから銀河皇国に潜伏していたものと思われている。  また人体間で感染するのか、感染するならばどのような形態をとるのかも不明であり、あらゆる病気を克服して来た銀河皇国に残った難病である。  そしてこれは俗説の域を出ないが、罹患者は星大名や恒星間企業の重役に多数見られ、宇宙で活動する期間が長く、高いストレスに晒される事案が多い人間である事から、そう言った生活環境が未知の宇宙線の被曝と相まって、何世代にもわたって遺伝子に紛れていたシャドウ病原体の活動を開始させるのだという話もある。  その根拠となっているのが、遺伝子整理されたクローン人間の罹患率は、極端に低下するという事実であった。  このため、有効な治療法が発見されていない現在、特に星大名の間では血統維持のために当主嫡子のクローン人間―――いわゆる『クローン猶子』の製作が多く行われている。  SCVIDによって死亡した星大名の主だった者には、イマーガラ家のジーキス=イマーガラや、タルネーツ=リュゾージャなどがおり、いずれもその後の家督相続を巡って内紛を起こしている。 【この項おわり】  
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