episode175 酔狂サーカス②

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「いけないっ……!」 九条さんが言ったのと 大きな音をたてて教会が崩れ始めたのは ほぼ同時だった。 風向きが変わり あたりには黒煙が立ち込めた。 「征司は……?」 つい先刻まで そこにいたはずの兄の姿。 一瞬で見失い 僕は茫然と立ち尽くした。 「危ないっ……!」 小さな爆発音。 続けて落下する屋根の破片から 僕を守るように九条さんが身を伏せた。 「征司っ……!……征司お兄様はどこ?」 僕は地面に突っ伏したまま ただ闇雲に手を伸ばす。 そして徐々に はれてゆく煙の向こう――。
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