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「いけないっ……!」
九条さんが言ったのと
大きな音をたてて教会が崩れ始めたのは
ほぼ同時だった。
風向きが変わり
あたりには黒煙が立ち込めた。
「征司は……?」
つい先刻まで
そこにいたはずの兄の姿。
一瞬で見失い
僕は茫然と立ち尽くした。
「危ないっ……!」
小さな爆発音。
続けて落下する屋根の破片から
僕を守るように九条さんが身を伏せた。
「征司っ……!……征司お兄様はどこ?」
僕は地面に突っ伏したまま
ただ闇雲に手を伸ばす。
そして徐々に
はれてゆく煙の向こう――。
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