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「助けが必要ですか?」
ひとつ。
まばたきするまで
だいぶ時間がかかった。
男は辛抱強く待っていた。
「そうですか――」
しばし目を閉じたまま
僕は征司のことを思った。
『本当のことを知ったら今度こそあの人――』
そして先日
自分が口にした
『――あの人あなたを殺すでしょうね』
恐ろしい言葉を頭の中で反芻した。
「今宵お迎えに上がります」
その声に目を開くと
男はもう僕の隣から姿を消していた。
「アーメン」
唱えた終えた神父は
僕を促すように咳払いした。
今夜――。
献金箱を手に立ち上がる僕の足は
神の御前で子鹿のように震えていた。
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