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「すぐに戻る」
言い残し出ていく征司の
背中の静けさにぞっとした。
教会に火が放たれたのは
それから数時間後のことだった。
「――火事だ!」
その声を聞いた時。
僕は机に向って世話役が運んできた
味気ないマッシュポテトをつつきスープを飲んでいた。
落ち着いたふり。
何をしていてもえもいわれぬ緊迫感が
肌の上をひりひりと走り続けた。
やがて
「和樹――っ!」
騒音に交じって聞こえてきたのは
「九条さん……!」
あの人の声だった。
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