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チャリチャリと
ここへ――深い地下へと続く鍵の鳴る音がする。
近づいてくる足音は荒々しい。
あの人のものでないように。
僕の手をスプーンが滑り落ちた。
おかしいけれど
この期に及んで身なりが気になり鏡を覗き込む。
あの人と会う時はいつだって
少しでも美しくいたかった。
「和樹――!どこだ?」
「九条さん!」
呼び声に
精一杯応える僕の前に
ようやく姿を現した。
「和樹!」
自ら松明を手にした
僕の貴公子。
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