episode175 酔狂サーカス②

23/30
前へ
/30ページ
次へ
「火が回る前に逃げるんだ」  まるで 空中ブランコだ。 「僕についておいで――さあ、急いで」 彼に連れられた僕の身体は 宙に浮いているようだった。 すべてが現実じゃないみたいに感じる。 今までのことも 今起こっていることも。 夢の中。 雲の上。 だけどそれは 僕がただ思い描く世界であって。 現実は――。 外に出れば火の海。 黒煙を背に燃え落ちる十字架の前で。 「――っ!」 九条さんが突然ピタリ 歩みを止めた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

224人が本棚に入れています
本棚に追加