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「火が回る前に逃げるんだ」
まるで
空中ブランコだ。
「僕についておいで――さあ、急いで」
彼に連れられた僕の身体は
宙に浮いているようだった。
すべてが現実じゃないみたいに感じる。
今までのことも
今起こっていることも。
夢の中。
雲の上。
だけどそれは
僕がただ思い描く世界であって。
現実は――。
外に出れば火の海。
黒煙を背に燃え落ちる十字架の前で。
「――っ!」
九条さんが突然ピタリ
歩みを止めた。
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