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「これはどういうことだ?」
社長室に呼び出され、テーブルの上にバサッと投げられる雑誌。
そこにはこの間の買い物デートの写真。
やっぱり撮られてたか。
口頭だけじゃムリなことはわかってたけど。
どうせ撮られるんなら手を繋いでおけばよかった。
「姉です」
「お前の叔父は誰だ」
「社長」
「ウソをつくな、わかりきっていることを」
母の兄である社長に、こんなウソ通じないことなんてわかってる。
「そうじゃなくて、この記者にそう言ったんだよ」
今は周りに誰もいないから、煩わしい敬語は使わない。
あの時会ったのは、ファンじゃなくて記者だったんだ。
それをあげはさんには言わなかっただけで。
雑誌には『五十嵐雷、年上女性と買い物デート』と見出しがついてる。
あながち間違いではない。
俺はデートのつもりだったから。
あげはさんはホントに買い物だけだったみたいだけど。
「だがその記者はそれを真に受けなかったんだろ。どこの女性だ」
「今月の初めに母さんに強制的にお見合いさせられたヒト」
「…あぁ、あの中学の同級生だったって言う」
「え、何ソレ知らない」
そんなことあげはさんも言ってなかった気がする。
……イヤ、聞かなかったのは俺か。
てか、あげはさんは今でも知らないかも。
確かにあの時、初対面にしては仲が良かったようにも思える。
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