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「プライベートなことなのでとでも言っといて」
「まぁ、なんとでも言っておく」
揉み消すよりはラクだと思ったんだろう、叔父は楽しそうな笑み。
「しかし一緒に住んでるとなると、結婚しないとは言えないな」
「……わかってる、とりあえず母さんにはまだ内緒でよろしく」
婚姻届をすでに渡されてる時点で、この話をなかったことにはできないことくらいわかってるんだ。
だけど、お見合いだろうがなんだろうが、お互いに気持ちがないまま結婚したって、きっと壊れてしまう。
壊れてそんな終わり方をしてしまうくらいなら、初めからしない方がいいんだ。
……この先、何がどう転ぶかなんてわからないけれど。
「コレ、もらってく」
「何冊でも持っていけ」
イヤ…一冊で事足りるよ…
週刊誌を持って立ち上がると、隣に立った叔父に肩をポンッと叩かれる。
ニヤッと笑うその表情で、何を言われるかがわかって。
「いろいろがんばれ?」
やっぱり…と。
なんか癪だから、なんのリアクションもせず何も返さず社長室を出た。
「話は終わった?」
ドアを閉めれば横の壁にもたれている、今ちょー売れっ子現役アイドルがそこにいて。
俺の腕に絡まってくるその子から、甘くてキツい香水の香り。
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