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今までこういう香りに慣れていたハズなのに、ソレを不快に感じて小さく眉を寄せる。
「離れて」
そういえば、春頃にこの子クドこうとしてたんだっけ。
俺もこの子も忙しくてそんなこと忘れてたけど。
イヤ、この子は忘れてなかったのかも。
「もう、久しぶりに会ったのにぃ」
動く度に香るソレに、なんで今まで平気でいられたんだろうと、今になって思う。
…あぁ、そっか。
あげはさんは香水とか全くつけないから、ソレに慣れたんだ俺。
「ごめん、今から地方で撮影なんだ」
にっこりと笑って、腕に触れられていた手をソッと下ろしバイバイと手を振る。
これ以上一緒にいたら気持ち悪くなって吐きそうな気がした。
足早に近くにいた北馬さんのところに向かって。
「クドくのやめたんだ?」
「……あの匂い、耐えられない……」
「へぇ?」
怪訝な顔になる俺に、北馬さんは叔父と同じような笑みを浮かべて楽しそう。
「あの、五十嵐雷、がねぇ?」
「……なんだよ」
「いぃや?なんも?」
ニヤニヤとして歩き出すけど、正直ついて行きたくない。
そんなことムリだけど!
北馬さんに車出してもらわないと、俺どこにも行けないし。
こんなことならやっぱり免許取っとけばよかった。
今からでも遅くはないだろうけど、そんな行ける余裕ないしなぁ。
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