living.10

7/10
前へ
/165ページ
次へ
今までこういう香りに慣れていたハズなのに、ソレを不快に感じて小さく眉を寄せる。 「離れて」 そういえば、春頃にこの子クドこうとしてたんだっけ。 俺もこの子も忙しくてそんなこと忘れてたけど。 イヤ、この子は忘れてなかったのかも。 「もう、久しぶりに会ったのにぃ」 動く度に香るソレに、なんで今まで平気でいられたんだろうと、今になって思う。 …あぁ、そっか。 あげはさんは香水とか全くつけないから、ソレに慣れたんだ俺。 「ごめん、今から地方で撮影なんだ」 にっこりと笑って、腕に触れられていた手をソッと下ろしバイバイと手を振る。 これ以上一緒にいたら気持ち悪くなって吐きそうな気がした。 足早に近くにいた北馬さんのところに向かって。 「クドくのやめたんだ?」 「……あの匂い、耐えられない……」 「へぇ?」 怪訝な顔になる俺に、北馬さんは叔父と同じような笑みを浮かべて楽しそう。 「あの、五十嵐雷、がねぇ?」 「……なんだよ」 「いぃや?なんも?」 ニヤニヤとして歩き出すけど、正直ついて行きたくない。 そんなことムリだけど! 北馬さんに車出してもらわないと、俺どこにも行けないし。 こんなことならやっぱり免許取っとけばよかった。 今からでも遅くはないだろうけど、そんな行ける余裕ないしなぁ。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1067人が本棚に入れています
本棚に追加