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「こーら、窓を開けるな」
「メガネ外してるから大丈夫」
「そういうことじゃない、暑いんだよ」
……じゃあ、スーツ脱げばいいじゃないか。
とは思いつつ渋々窓を閉めるけど、まだ甘ったるい香りがしてる気がしてしかめっ面。
「もう何も匂ってないから大丈夫だ」
教えてくれるソレはホントなんだろうけど。
気のせいかもなんだけど、そうとは思えない鼻の奥にある残り香的な?
「……帰りたい……」
再びボソッとつぶやけば、ルームミラー越しにニヤついた笑みが見える。
「ヒトは変わるもんだなぁ」
心底、それはもうホントに心底楽しそうで。
今日はなんだがとことんおもしろくなくて、不貞腐れた表情になるのが自分でもわかる。
「帰りたい、とか雷の口から聞けるとは思わなかった」
…そんなこと、俺自身も思ってなかったよ。
だけど、なんか扱い雑だし、常識半分通じないけど。
でもあそこが…あげはさんのいるあの家が、自分の居場所なんだって。
今までは帰る場所はない…って思ってた。
けど、一緒に過ごすようになって、あそこが俺の帰る場所だと思えるようになって。
あげはさんにしたら迷惑な話かもしれないけど。
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