living.10

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「こーら、窓を開けるな」 「メガネ外してるから大丈夫」 「そういうことじゃない、暑いんだよ」 ……じゃあ、スーツ脱げばいいじゃないか。 とは思いつつ渋々窓を閉めるけど、まだ甘ったるい香りがしてる気がしてしかめっ面。 「もう何も匂ってないから大丈夫だ」 教えてくれるソレはホントなんだろうけど。 気のせいかもなんだけど、そうとは思えない鼻の奥にある残り香的な? 「……帰りたい……」 再びボソッとつぶやけば、ルームミラー越しにニヤついた笑みが見える。 「ヒトは変わるもんだなぁ」 心底、それはもうホントに心底楽しそうで。 今日はなんだがとことんおもしろくなくて、不貞腐れた表情になるのが自分でもわかる。 「帰りたい、とか雷の口から聞けるとは思わなかった」 …そんなこと、俺自身も思ってなかったよ。 だけど、なんか扱い雑だし、常識半分通じないけど。 でもあそこが…あげはさんのいるあの家が、自分の居場所なんだって。 今までは帰る場所はない…って思ってた。 けど、一緒に過ごすようになって、あそこが俺の帰る場所だと思えるようになって。 あげはさんにしたら迷惑な話かもしれないけど。
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