living.11

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「……うん、行く」 「あ、七夕もそろそろ検診の時間よ」 「ホントだ~、行かなきゃだね」 店を出てその場で手を振りニ人と別れて、小さくため息。 楽しくないわけじゃない。 ニ人といると気を遣わなくていいからラク、なんだけど… どこか置いてかれてるような、感覚。 この歳になると、いろんなことが。 比べられることは正直、しんどいしキツい… 「さて、ホントに買い物に行く?」 ……雷は、どこまであたしのことをわかってるんだろう。 少し思っただけで、顔には出てなかったハズなのに。 「ん?」 ジーっと見ているのに気づかれて、でも柔らかい笑顔。 「疲れた?やっぱり真っ直ぐ帰る?」 雷の、優しさが… あたしの心に…罪悪感を募らせる。 その優しさの一つ一つを返せているのかが、わからないから。 こうやって、何も言ってないのに察してくれるけど、あたしには同じように雷のソレを読み取ることができない。 「……親子丼なんでしょ?材料買わなきゃ」 「別に今日じゃなくてもいいけど?」 「いいの、あたしにできることってそれくらいだから…」 言ってる意味がいまいちわからなかったんだろう。 眉を寄せてジッと見てくる。 ソレに対してあたしは小さく笑うだけ。 聞いてこないということは、聞いてもあたしが答えないってきっとわかってるから。 過ごしてきた時間は少ないけど、理解しようと努力してるヒトにはそんなこと…時間とか関係ないのかも。 あたしは、雷のこと…何も知ろうなんて思ってこなかったから。 その違いが、立ち止まったあたしの数歩先で振り向いて首を傾げる雷との、距離。 でも今はまだ、この距離を縮める術をあたしは…知らない。
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