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「……うん、行く」
「あ、七夕もそろそろ検診の時間よ」
「ホントだ~、行かなきゃだね」
店を出てその場で手を振りニ人と別れて、小さくため息。
楽しくないわけじゃない。
ニ人といると気を遣わなくていいからラク、なんだけど…
どこか置いてかれてるような、感覚。
この歳になると、いろんなことが。
比べられることは正直、しんどいしキツい…
「さて、ホントに買い物に行く?」
……雷は、どこまであたしのことをわかってるんだろう。
少し思っただけで、顔には出てなかったハズなのに。
「ん?」
ジーっと見ているのに気づかれて、でも柔らかい笑顔。
「疲れた?やっぱり真っ直ぐ帰る?」
雷の、優しさが…
あたしの心に…罪悪感を募らせる。
その優しさの一つ一つを返せているのかが、わからないから。
こうやって、何も言ってないのに察してくれるけど、あたしには同じように雷のソレを読み取ることができない。
「……親子丼なんでしょ?材料買わなきゃ」
「別に今日じゃなくてもいいけど?」
「いいの、あたしにできることってそれくらいだから…」
言ってる意味がいまいちわからなかったんだろう。
眉を寄せてジッと見てくる。
ソレに対してあたしは小さく笑うだけ。
聞いてこないということは、聞いてもあたしが答えないってきっとわかってるから。
過ごしてきた時間は少ないけど、理解しようと努力してるヒトにはそんなこと…時間とか関係ないのかも。
あたしは、雷のこと…何も知ろうなんて思ってこなかったから。
その違いが、立ち止まったあたしの数歩先で振り向いて首を傾げる雷との、距離。
でも今はまだ、この距離を縮める術をあたしは…知らない。
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