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「え?何?家族以外でも行ってもいいの?」
相手の声なんてもちろん聞こえないから、あげはさんの前で座って首を傾げれば、気づいてこっちを見て苦笑い。
「雷もいいの?」
は?俺も?
「ヤ、いるけど…わかった、今掃除中だから夕方にはそっちに行けると思うよ」
えーと?なんか、俺の話も出てたみたいだけど、承諾ナシで話がまとまった感じ?
通話を終えため息をつくあげはさんをジーッと見てると、どこか苦しそうな表情。
「産まれたんだって、七夕の赤ちゃん」
ソレは苦笑いを浮かべて言うことではないと思うけど。
「え?だって予定日ニ月の初め頃って…」
「早産だったみたい、けどニ人とも元気だそうよ」
とか言われても、俺の周りで出産したヒトいないからわからない。
「って、俺も行っていいの?」
わからないけど、家族以外は行っちゃダメって言うのは知ってる。
「あー、うん、病室に入らなければいいって」
ずっと苦笑いを浮かべたままのあげはさんは…
なんて言うんだろう、どこか寂しそうで。
腕を掴んでその小さな体を引き寄せ抱きしめた。
「雷?」
「……なんか、寂しそうな顔してた」
「また親がうるさくなるな、とは思ったけど」
浅いため息、イヤ、ホントのことなんだろうけど。
自分がそんな顔してるって、気づいてないのか。
「…ソレだけ?」
「え?他に何が?」
至近距離、キョトンとした顔を向けてくる。
ソレはホントにソレ以外は考えていなかったみたいで。
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