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じゃあ、さっきの寂しそうな表情はいったいなんだったんだよ。
しかも、苦しそうな表情も一瞬見せてたよね?
え?何?俺の見間違い?
「なんか、心配してくれてた?」
「……ヤ、うんまぁ、うん……」
「今さらだけど、あたしに暗い過去とかいっさいないからね?」
「いっさい?」
少し離れてソレをわざわざ言ってくる。
今の世の中、いろんな過去をお持ちの方が結構いらっしゃるからソレを言ってきたんだろうけど。
逆にいっさいないってすごくない?
誰だって、知られたくない過去の一つやニつあるものなのに。
「だから、同居人の心配なんてしなくていいの」
──あ、なんか今、“ここまで”って線引きされた感じがした。
『同居人』という言葉に、急に距離ができた気がする。
もともとあった距離が、より明確になったような…
「さ、早く掃除終わらせないと月海に怒られる」
「…んー、じゃあ、あげはさん何もしないで」
もしかしたら他人以下かも…とか思うと気が重い。
男として見てくれなくてもいいから、せめて友達くらいにはなりたいな。
「なんで、終わんないわよ?」
「二度手間」
はっきりキッパリと言えば、文句でも言いたそうな表情。
だけど結局言わないのは、俺の言った意味がわかったんだろう。
自分がどれだけ掃除がヘタかということを。
「あーげーはーさん?」
子供みたいにソファーの上で拗ねるから、その前に座って手を握らせてもらう。
ギュッと握ったりはしない、触れるだけ。
拒絶されることはないけれど。
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