living.12

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「終わるまでここから動かないで」 フォローなんかしない。 「手を握ってめっちゃ笑顔で言うことじゃない」 「一緒にやろうって言うと思った?」 「思わない。一歩も動かないから安心して掃除して」 不貞腐れた表情で、そのままソファーにもたれる。 まぁ、大人しくしててくれるなら機嫌損ねててもいいか。 掃除終わるまでには直ってるだろう。 「早く終わらせるから」 「………」 返事ナシ。 目の前にいるのに、目も合わせてくれない。 ムシっすか… 仕方ないと、後頭部をポリポリ掻きながらさっきの続きに取りかかる。 窓を拭きながらチラッと見れば、置いてあったクッションを抱きしめている姿。 その表情は、若干怒ってるっぽい。 ここで俺が折れて一緒にやろうと言おうものなら、満面の笑みを浮かべて張り切ってやりだすだろう。 だけど、そうはいかない。 あげはさんが掃除したところを、後ろから掃除し直すなんて二度手間以外のなんでもないし。 心を鬼にして掃除をしまくった。 夕方、終了するまで、ホントに一歩も動かなかったあげはさん。 何をするわけでもなく、同じ姿勢で何時間も動かない。 ある意味、尊敬する。 機嫌はもちろん直ってないようで。 アレ以降、いっさい口を聞いてくれません。 今までで一番機嫌が悪くなってる気がする。 「あげはさん?そろそろ行きますか?」 なのでついつい、口調が敬語になってしまうのは仕方ないことで。
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