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「終わるまでここから動かないで」
フォローなんかしない。
「手を握ってめっちゃ笑顔で言うことじゃない」
「一緒にやろうって言うと思った?」
「思わない。一歩も動かないから安心して掃除して」
不貞腐れた表情で、そのままソファーにもたれる。
まぁ、大人しくしててくれるなら機嫌損ねててもいいか。
掃除終わるまでには直ってるだろう。
「早く終わらせるから」
「………」
返事ナシ。
目の前にいるのに、目も合わせてくれない。
ムシっすか…
仕方ないと、後頭部をポリポリ掻きながらさっきの続きに取りかかる。
窓を拭きながらチラッと見れば、置いてあったクッションを抱きしめている姿。
その表情は、若干怒ってるっぽい。
ここで俺が折れて一緒にやろうと言おうものなら、満面の笑みを浮かべて張り切ってやりだすだろう。
だけど、そうはいかない。
あげはさんが掃除したところを、後ろから掃除し直すなんて二度手間以外のなんでもないし。
心を鬼にして掃除をしまくった。
夕方、終了するまで、ホントに一歩も動かなかったあげはさん。
何をするわけでもなく、同じ姿勢で何時間も動かない。
ある意味、尊敬する。
機嫌はもちろん直ってないようで。
アレ以降、いっさい口を聞いてくれません。
今までで一番機嫌が悪くなってる気がする。
「あげはさん?そろそろ行きますか?」
なのでついつい、口調が敬語になってしまうのは仕方ないことで。
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